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無意識過剰 第26話

工場のなかに人の姿はない。ただ忙しなくベルトコンベアが動いているだけだ。ベルトコンベアの上に並べられたガラクタが次から次に流れて行く。
生産ラインの途中にある箱の中にいくつかガラクタが入っていくとそれが1つにまとまり箱から出てくる。さらに先にある機械には世界史の用語集(平成22年改訂)がセットされている。
そして、その箱を通ったガラクタの集合体はどういう仕組みか謎だが自主的に歩いて、あるいは這ったり転がったりしてどこかへと消えて行く。工場の天井にから下がるプラカードには「耐さわやか加工」と書かれている。

…何の工場なのか想像もつかない。

目の前のベルトコンベアを見慣れたものが流れて行く。私のアーノルドだ。気付いた時にはすでに遅く、アーノルドは箱へと吸い込まれていった。タキシードが続くようにして箱に入り、ランプが灯る。軽快な音と共に大きなものが箱から出てきた。
…鳩がタキシードを着ている。背丈は180センチ程だろうか。用語集の装置に入る前にひょいとベルトコンベアから降り私の前へと歩いてきた。

「おやおや、お嬢さん良いものを持っていますね。」

よく響くバリトンボイスで話し掛け、私の手のひらから大豆をさらっていった。

「ア…、アーノルド…?」

「いかにも。私の名前はアーノルド・ポポロンチーネ。由緒正しい矢車家の鳩です。」
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無意識過剰・ふたり

treasure

モツさんからサファイアさんとノイくんの絵を頂いてしまいました!
サファイアさん美人! ノイくんかっこよす!
お互いあと一息で殺せそうな感じです。信頼感と緊迫感を同時に感じる素敵な絵です。うへへ。
モツさんありがとうございましたー!!

モツさんのサイトはこちらから。

無意識過剰 第25話

「アーノルド!」

間違いない。あれは私の愛鳩、アーノルド・ポポロンチーネだ。闇を切り裂く白い翼、燃えるような赤い目のハト。

「少年、ついてきてくれるか」

頷いた彼の手を握って走り出す。途中、ドレスを着た女性とすれ違った。

「サファイア、行ってくる!」

「いってらっしゃい。暗くなる前に帰っておいでよ」

アーノルドを追って木立の隙間を縫うように走っていると、突然足元の感覚が硬質なものに変わった。周囲の様子も、今までとは違い工場のような佇まいだ。

「アーノルド?見失ったか……」

「どこだろうね、ここは」

ともかく疲れた。日頃の運動不足が祟ったな……。
工場の床に座り込み、お互いに自己紹介をする。少年の名はノイズ・ノアというらしい。間をとってノイくんと呼ぶことにした。
さっきのドレスの女性はノイくんの姉さんか、と聞くと、彼はむちゃくちゃ微妙な顔で「違うよ……」とだけ答えた。


改めて状況を確認してみる。
私、矢車麻衣子。持ち物:ポケットにハトの餌の有機丸大豆。
ノイくん(私の延命装置)、持ち物:折り畳み式ナイフ。以上である。
これだけの装備では若干心もとないが、工場の中を探索してみることにした。……

4/21 白石

無意識過剰 第24話

「ハ、ハ……ハトッ……! ハトだぁ!」

この際多少、ハトでなくとも問題は無いだろう。思わず駆け出す。もう私には、少年がハトにしか見えない。ムツゴロウさんも裸足でにげだすほど、もふもふする。

「もふもふでしゅねー、ここがいいんでしゅか?」

これは思った通りの手触りだ。その心が落ち着く感触に、感じていた動悸が次第に収まると共に冷静な思考がもどってくる。
自分がしたことにハッとし、急いで少年から離れる。
もふもふ攻撃のせいで少年の髪の毛はボサボサだ。まるで、アグレッシブなモップのようだ。

「すまなかった。」

素直に頭を下げる。やはり、ハトがいないと大変なことになってしまう。どういうわけかわからないが、物心ついた時から私はハトと一緒に居た。そのせいか、ハトが居ないと禁断症状が起こる。少しの間なら鳩サブレで症状を緩和出来るがやはり長時間となると難しい。
少年にそのことを伝えると、頭を撫で続けることを快諾してくれた。

「一緒に私のハトを探してくれないか?」

少年の頭を撫でながら尋ねる。すると少年が森の一角を指先した。
見通しの悪い森の中で何か白いものが横切るのが目の端に映る。

4/20 K

無意識過剰 第23話

「冗談じゃない……布部め」

私はいま妙な森の中にいる。じめじめして不快だ。足元に妙な生物がうごめいているのを、現在、必死で見ないふりをしている。
私――矢車麻衣子(やぐるままいこ)――は爆発した頭で考える。

――私のハトはいったいどこへ行ったのか?

こうなってしまったのは、なにもかもあの布部の連中のせいである。奴らが妙なことをしなければ、私は今頃、美しい自宅の中庭で優雅にティータイムをたしなんでいたはずなのだ。もちろん、私のハトと一緒に。
しかしどうしたものか。この鬱蒼とした森の中、ハト一匹を探し出せるとは思えない。それどころか私がここでのたれ死ぬ可能性だってある。

「くそう、にゅのぶみぇ……噛んだ、布部め」

奴らとはこれまでにもいろいろ因縁があり、お互いに死闘を演じ続けてきたが――が、それにしたって今回のはひどい。リアルに死の恐怖を感じる。それにつけてもハトはどこだ。
ハトがそばにいなければ私は……。

動悸を感じ始めた私の目の前を、一つの人影が横切った。
灰色の髪、オレンジの眼、どことなくハトを思わせる少年――……


4/7 白石
プロフィール

白石アオイ

Author:白石アオイ

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