FC2ブログ

無意識過剰 第29話

バクハツ頭の中で何か白いものがもぞもぞと動いている。髪の毛に絡まっているのだろうか?クークーと悲哀に満ちた鳴き声がする。あれは一体何だろうか?

「おい真!私の習字道具を返せ!」

あまりの大声に、その白い何かは動きを止めた。
麻衣子さんと言ったか。彼女はなおも上の階に向かって叫び続ける

「お前の習字道具、何なんだ! 降りて来い!」

その剣幕に、真さんはしぶしぶ二階から降りてきた。麻衣子さんの髪型を見ると、しまったという表情を顔に浮かべた。しかし笑いが堪えきれないのだろう。肩が小刻みに震えている。

「お前の道具を使ったらこうなったんだ。 あの緑の墨汁は何だ? 筆を浸けたらショッキングピンクになるわ、筆は筆で墨に浸けたらパーマがかかるわ。」

真さんの習字道具がとても気になる。麻衣子さんが手に持っているのがそうだろうか?見た目はいたって普通の習字道具だ。

「あー、やっぱりかぁ。布の染色液とかを入れてたんだけどなぁ。」

「そんなことはどうでもいい、この髪をどうしてくれるんだ!?」

筆にパーマがかかるのも、ショッキングピンクになるのもわかる。何故髪の毛まで。

「全部お前のせいだ! パーマのかかった筆をテーブルに置いたら、転がってテーブルから落っこちて、その筆が床にあったミニカーを動かして、そのミニカーが向かった先の綺麗に並べられたドミノがパタパタ倒れて、ドミノの先にあったビー玉がフローリングの溝にそって転がって、扉にぶつかったら、扉に挟まっていた黒板消しが落ちて、黒板消しに繋がった糸はカーテンレールまでまっすぐ延びていて、黒板消しが落ちると同時に糸の反対の端に繋がった缶はカーテンレールの上へ、缶の中の有機大豆はカーテンレールの上を転がって、それに飛びかかったアーノルドの脚がテーブルクロスに引っ掛かって、私の頭にこの墨汁がかかったのもお前のせいだ!」

ここまで息継ぎなしだ。すごい肺活量だ。

6/30 K
スポンサーサイト



無意識過剰 第28話

このハトが現れてから、確実に『奴ら』に変化が見え始めた。のしかかってくる塊が、ずいぶん軽くなっているのだ。糊もほとんど乾いたようだ。これ幸いと、腕に力を込め、塊を押しのける。
アーノルドが優雅に翼をひとふるいさせると、たちまち「朕は国家なり!」と叫んで消えた。うそつけ。僕らの体にこびりついていたデンプン糊も、羽ばたきに吹き飛ばされて綺麗に散り散りになった。

「麻衣子のハトだ……」

「そうだわ、なんでこんなところに……しかも、なんでタキシード……」

真さんと聖子はひそひそ何か話し合っている。どうも知ったハトらしい。僕も、麻衣子という名前には聞き覚えがあった。


話は2日ほど前にさかのぼる。冬休みに突入したその日、僕、空井玲二をはじめ、真さん、聖子、実くんの4人は水津家のロビーに集合していた。僕らは入念に準備を重ね、水津家の封印された部屋の大鏡からフユカイワールドへ入ろうと計画していたのだ。
そこへチャイムが鳴り、来客を告げた。執事である僕がともかくも向かうこととなる。

「はい、こちら水津家ですが」

「矢車麻衣子と申します。真くんいますか? あいつ、私の習字道具を間違えて持って帰ったんです」

学校の友人のようだ。門へ向かうと、制服のネクタイの代わりにベルベットリボンを首に優雅に結び、制服のスカートにフリルとレースをあしらった、優雅な――バクハツ頭の女の子が立っていた。レゲエシンガーのような髪型だ。鳥の巣のような、と言えばいいのだろうか。

僕があっけにとられて立っていると、麻衣子さんと名乗った女の子はむっとした様子で、ずかずかと家の奥に入り込んでいった。
プロフィール

白石アオイ

Author:白石アオイ

カテゴリ
リンク