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無意識過剰 第8話

スイカの種飛ばし専用廊下にぞうきんをかける。この屋敷でこんな面白い行事が行われているとは正直、考えにくかった。翡翠さんはおちついた人だし、メイド長もあのぶっきらぼうな態度を見るに、スイカの種飛ばしが好きだとは思えない。むしろ、そうだったらすごいギャップだが、残念ながら僕はギャップ萌えではない。
頭を思い悩ませ、腰を痛ませつつ、長い廊下を駆け抜けていると、やはりカサカサ音がする。奴らか。

(――ああ、奴らのせいか)

この屋敷が妙に陰気なのも、子供たちがいないのも。
スイカの種飛ばしをしたがるのは子供たちに違いない。おそらく、礼奈お嬢様が『奴ら』に連れて行かれて(どこへ?)しまったから、真様は寮のある学校に行くことになったのだろう。また『奴ら』の犠牲に(生きているのか?)ならないための、翡翠さんの親心だ。

カサカサ。今度の奴は動きが素早い。
カサカサ、……見つけた。片方になった靴下だけでできた、蛇。

「――やあ!」

NHK教育テレビの、体操のお兄さんばりの笑顔で声をかける。蛇はびっくりしたように跳ね上がって、消えた。今回の断末魔は、「第三身分とは何か……」に聞こえた。いきなり近代だ。
――ともかく僕は、またこの廊下でスイカの種飛ばしが行われるためには、奴らを退治しなくてはならないということを知った。別に、スイカの種飛ばしが見たいわけではないが、礼奈お嬢様と真様が帰ってこないことには、この屋敷の陰気さは消えないだろう。

しかし、『奴ら』とはいったい何なのか? 不要物が塊になったような存在、消えるときに世界史で習ったような言葉を叫ぶ、おかしな奴らだ。
そんなことをぼうっと考えつつ立っていると、通りがかったメイド長に「何さぼってるの」と言われ、あわてて掃除を再開する。

(ともかく、『奴ら』はさわやかさで退治できるのか)

それなら頑張ろうじゃないか。そろそろ、腰がずいぶん痛い。
と、そのとき、いきなり電話が鳴り響いた。――出るべきか?
少し迷いつつ、僕は電話のもとへと向かった……。


フランス革命:Wikipedia
9/20 白石

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Author:白石アオイ

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