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無意識過剰 第11話

ハダカデバネズミのぬいぐるみ(不細工)は、小さな目をぎょろぎょろさせて、僕を見てくる。

「こっちへ来てしもうたんなら、まぁ頑張りんさい。 出られるかどうかは分からんけどのう」

「えええと、ぐ、具体的にはどうすれば」

「こっちは不愉快で残念な世界じゃ。あんたのそのTシャツ、こっちの世界に気に入られてしもうたらしい」

このTシャツ……”サルでも分かる量子電磁力学”Tシャツが、まさかこんなところでアダになるとは。どうにかしなくては。
とりあえず、部屋の外へ出てみよう。何かあるかもしれない……。



一方、ここは清大路高校……

「ちくしょー、結局、彫刻刀届けてもらえなかったなー」

そう言いつつ、今日も工芸教室の備品の彫刻刀で版画を彫るのは、布部(ぬのぶ)の同級生、水津真である。布部というのは、布を使って文化的な活動をする部活、つまり手芸部である。この放送係がよく噛むネーミングをしたのが、他でもない真だった。ノリがよく、おちゃらけていて女子ともしょっちゅう話している。

「うおっ! 聖ちゃんの、クオリティー高っ! すげぇー」

「真くんもさっさと片づけちゃえばいいのに」

「えー、だって、この彫刻刀古くて錆びてるんだもん……」

今、真が話しかけているのは、同じく布部の、空井聖子(そらいせいこ)であった。ストレートの黒髪が涼やかな美人である。羨ましい。
ちなみに聖子はとっくの昔に課題を終えていて、今は観音像を彫っていた。彼女の才能は布だけに発揮されるのではないようだ。

……チャイムが鳴る。今日も真の版画は進んでいない。

「そういや知ってるか? 最近、理科室前の鏡で……」


9/26 白石

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Author:白石アオイ

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