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無意識過剰 第17話

とりあえずこの鏡にもう用はないので寮に戻り、白装束を着替えた。
ロビーのソファに座り、いったい何があったのか、聖子の兄、玲二さんは語りはじめた。

「まず、真さんに彫刻刀を取ってきてって言われたことがはじまりなんだよね……」

さわやかに苦笑いしつつ、「真さんがメイド長に会いたくないって言わなければ……」とひとりごちた。俺は布を届けにきた真の家のメイド長に会ったことがあるが、急いでいたらしく3階から飛び降りて駐輪場の屋根を盛大に踏み抜いていった。真は職員室に呼び出された。

「……とまあ、そんなわけでその変な空間を抜けて、森に出たわけなんだ」

しまった、聞き逃した。ロココ調の千手観音からいったいどうやって逃げ出したんだろうか。……ここからはちゃんと聞こう。


僕はしばらくその切り株の上に座っていた。今日はもうだいぶん走って疲れているし、何より状況がよく分からない。こちらの世界に来たと言うことは、礼奈お嬢様と同じ立場、つまり向こうの世界では行方不明になってしまったということだ。すいません翡翠さん、まだ2日目なのに。
不安がぐるぐると渦巻く僕の周りに、いつのまにか妙な生き物が集まってきていた。

「……うわ、なんだこいつら?」

白くてまん丸で、ぎょろぎょろ丸い目に手足のたくさん生えた謎の何かや、長身で口が大きく裂けた亜人のような謎の何か、もさもさ毛が生えた謎の何かに沼から生成する謎の何か。不愉快なことに、悩む僕を取り囲んで勝手にお茶会を開いていた。

「ヨウコソ!」「ヨウコソ!」

なんなんだこいつらは? 立ち上がろうとしたが、もちもちねばねばした謎の何かに右手をつかまれている。もう泣きそうだ。
そこへ、森の木々の間にドレスをまとった人影が見えた。僕は一も二もなく、その人に大声で呼びかけた。

「すみませーん! そこの人ー!!」

10/3 白石

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Author:白石アオイ

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