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無意識過剰 第21話

玲二さんは屋敷に入るなり、メイド長からお叱りをくらっていた。無断欠勤だから当然だ。しかし、真の姿を見るとメイド長は顔色を変え、真の母親を呼んできた。

「――真!? どうして戻ってきたの」

「おちつけよお母様、いいニュースがあるんだ。礼奈が帰ってくるかもしれないんだよ!」

「礼奈が? ……いったいどういうこと?」

当惑したような期待したような顔をする母親とメイド長に、玲二さんはこの3日間の無断欠勤とロココ調とフユカイな森とネギについて、簡潔に説明した(全部分かってもらえたかどうかは謎)。ネギはとりあえず、厨房にいた、がたいのいい板前に渡しておいた。こちらも、なかなかのさわやかさだ。

「つまり、ある程度鏡に出たり入ったりすることは可能だということです。」

玲二さんを鏡の中から召還したみたいに、真の妹も帰ってくるかもしれない。少なくとも、試してみる価値はある。――そう玲二さんが伝えると、母親とメイド長の表情が少し晴れた。まぁ、多少方法が突飛ではあるが……。

「……分かりました。空井さん、これをどうぞ」
「え? これは……」


「けさ仕立て上がりましたの。これからはこの服で働いてください」

手渡された包みから取り出されたのは、見事な縫製で、深いえんじ色の執事服だった。これは布部として羨ましいぞ……。聖子もそれを驚きの目で見ていたが、思い出したように言い出す。

「たしか、時間の流れがザンネンだって言ったわよね、お兄ちゃん」

「ああ。僕は数時間だと思ったけど、帰ってきたら3日後だったよ」

「それあら、鏡に入るんだったら冬休みまで待った方がいいような気がするけど。学校が大騒ぎになるわよ」

なるほど、たしかにその通りだ。とりあえず話はこれでまとまった。寮に電話を入れて真の家に泊まることを伝え、板前の作ったすばらしい味のネギ焼きをいただいた。
……鏡の中で、ときおりカサカサいう音が聞こえてくる。

10/6 白石

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Author:白石アオイ

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