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無意識過剰 第28話

このハトが現れてから、確実に『奴ら』に変化が見え始めた。のしかかってくる塊が、ずいぶん軽くなっているのだ。糊もほとんど乾いたようだ。これ幸いと、腕に力を込め、塊を押しのける。
アーノルドが優雅に翼をひとふるいさせると、たちまち「朕は国家なり!」と叫んで消えた。うそつけ。僕らの体にこびりついていたデンプン糊も、羽ばたきに吹き飛ばされて綺麗に散り散りになった。

「麻衣子のハトだ……」

「そうだわ、なんでこんなところに……しかも、なんでタキシード……」

真さんと聖子はひそひそ何か話し合っている。どうも知ったハトらしい。僕も、麻衣子という名前には聞き覚えがあった。


話は2日ほど前にさかのぼる。冬休みに突入したその日、僕、空井玲二をはじめ、真さん、聖子、実くんの4人は水津家のロビーに集合していた。僕らは入念に準備を重ね、水津家の封印された部屋の大鏡からフユカイワールドへ入ろうと計画していたのだ。
そこへチャイムが鳴り、来客を告げた。執事である僕がともかくも向かうこととなる。

「はい、こちら水津家ですが」

「矢車麻衣子と申します。真くんいますか? あいつ、私の習字道具を間違えて持って帰ったんです」

学校の友人のようだ。門へ向かうと、制服のネクタイの代わりにベルベットリボンを首に優雅に結び、制服のスカートにフリルとレースをあしらった、優雅な――バクハツ頭の女の子が立っていた。レゲエシンガーのような髪型だ。鳥の巣のような、と言えばいいのだろうか。

僕があっけにとられて立っていると、麻衣子さんと名乗った女の子はむっとした様子で、ずかずかと家の奥に入り込んでいった。

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白石アオイ

Author:白石アオイ

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