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無意識過剰 第2話

さわやかな草原の、白く清楚で、かなりでかい屋敷が、僕こと空井玲二(そらいれいじ)の新しい職場である。働く環境としては悪くない。僕は今までの下宿を引き払って、ここで住み込みで働くことになった。


面接はあっけないほど簡単に終わった。面接官は、30から40くらいの細身で長身の女の人だった。この家の女主人らしい。月か太陽かでいえば月、図書委員か体育委員かでいえば図書委員、アルトリコーダーで、全部の穴に余裕で指が届くほど長い指の人である。僕がそんなどうでもいいことを考えている間、女主人の方は僕をしっかり見ていたらしい。


「空井さん。私の顔に、なにか」

「あ、いえ、あなたは月みたいな方だなあと」

ぼんやり考えていたことをそのまま口に出してしまい、面接官は薄く笑った。何なんだ。
あとは簡単な応募理由と、好きな食べ物を聞かれたので、不景気のあおりをくって大卒後、就職できなかったから、そして好きな食べ物はミンティア、と答えておいた。


「わかりました。あなたは採用、ということで、明日から働いてもらいます。
 私は水津翡翠(みなつひすい)、この水津家の当主です。どうぞよろしく」

「はあ、よろしくお願いします」

「仕事は、家事の手伝い、……ですかね」


『ですかね』?僕は少し、ひっかかった。それ以外にも何かあるのだろうか。そして、なぜさわやかさが求められるのだろうか。

「あの、どうしてさわやかでなくてはいけないのですか」

翡翠さんは笑みを消し、真剣な顔になって、およそ真剣だとは思えないことを言い出した。


「さわやかさこそが、奴らに対抗する、唯一の手段なのです」



9/7 白石

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Author:白石アオイ

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