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無意識過剰 第3話

『奴ら』が何なのかはともかく、僕はこの屋敷で働き始めた。僕のためにと割り当てられた部屋は決して大きくはなかったが、今まで住んでいた1ルーム、風呂なし、共同トイレ、南向きの窓(新しくできたマンションにより機能していない)の下宿より快適なことは間違いなかった。


屋敷の案内と仕事の説明をしてくれたのは、この屋敷でメイド長をしている上尾愛(うえおあい)さんという英語で自己紹介したくない人だ。おばさんと呼ぶにはまだ若い気がするが、お姉さんと呼ぶにはいささか勇気がいる……それくらいの年の人だった。メイド長とはいうもののこの屋敷には彼女1人しかメイドはいない。大事なのは雰囲気だろうか。彼女はロングスカートのメイド服をひるがえしながら先を歩いていく。


「この部屋は書斎で、知ってる限り3回は床が抜けてる。掃除のとき腕がつかれるところ。
 時々、本の間からヘソクリが見つかる。」

同じような扉がいくつも並んでいるのだ。説明は聞いているが実は覚えていない。気付いたことだがこの屋敷には異常に鏡が多い。各部屋に1つずつ、廊下にも部屋と部屋の間に1つずつ。メイド長は歩くとき、その1つ1つを目の端で確認している。かなりのナルシストなのか?
鏡はどれも磨き上げられ、チリ1つない廊下を映している。ふと、1つの鏡を見ていると、廊下のすみに、毛玉――それも、着古したトレーナーから出るのを3年分集めたくらいの大きさのもの――を見つけた。掃除の手抜きかと振り向くが何もない。もう一度鏡に向き直る。いつも鏡を見るときのクセが出てしまい、無駄にさわやかに振り返る。
――メソポタミア文明ッ! ジュッ……
そんな風に聞こえる擬音語を残して毛玉が消えた。これは面白い。

そう思っていると、メイド長は、ある1つの扉の前に立ち止まった。


メソポタミア文明:Wikipedia
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白石アオイ

Author:白石アオイ

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